From Local to Global 私と公衆衛生
健康危機管理②原発事故時の情報開示と避難
第31回
国際医療福祉大学副学長 岩尾總一郎(元厚労省医政局長)
2011年5月1日号
福島第1原子力発電所の事故は、想定外の地震と津波による被害とはいえ、日本の原発安全神話を根底から覆した。初期判断の遅れと、情報公開の拙劣さ、事故対応を巡って官邸、東京電力、経済産業省・原子力保安院の間で相互不信があると報道されているが、国民は安全な生活が今後とも保障されるのかどうかが一番知りたいところ。放射線の影響に関する情報提供の難しさは、核種、線量、半減期など見えない恐怖が支配しているといっても過言ではない。
86年4月26日に発生したチェルノブイリ原発事故も、当初、ソ連政府は住民のパニックや機密漏洩を恐れて公表せず、避難指示もなかった。情報を知らされていない消防や救急など、事故処理に当たった人の多くが放射能の犠牲になった。現在でも、この事故による正確な犠牲者や障害発生の頻度などはわかっていない。事故の第1報が厚生省に入ったのは2日後、...
福島第1原子力発電所の事故は、想定外の地震と津波による被害とはいえ、日本の原発安全神話を根底から覆した。初期判断の遅れと、情報公開の拙劣さ、事故対応を巡って官邸、東京電力、経済産業省・原子力保安院の間で相互不信があると報道されているが、国民は安全な生活が今後とも保障されるのかどうかが一番知りたいところ。放射線の影響に関する情報提供の難しさは、核種、線量、半減期など見えない恐怖が支配しているといっても過言ではない。
86年4月26日に発生したチェルノブイリ原発事故も、当初、ソ連政府は住民のパニックや機密漏洩を恐れて公表せず、避難指示もなかった。情報を知らされていない消防や救急など、事故処理に当たった人の多くが放射能の犠牲になった。現在でも、この事故による正確な犠牲者や障害発生の頻度などはわかっていない。事故の第1報が厚生省に入ったのは2日後、当時
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