一筆入魂
知られざる「薬剤性パーキンソニズム」は薬害か
副作用を食い止める「システム」機能せず
ノンフィクション作家 辰濃哲郎
2010年11月15日号
こんな父ではなかった。 3年前の3月のことだ。兵庫県内の80歳になる男性が腹痛を起こし、神戸市内の公立病院で胃潰瘍と診断された。胃に小さな穴が開いているという。緊急に手術が行われることになった。 小さな穿孔だったので、開腹して脂肪の膜で穴をふさぐ簡単な手術が施された。2週間ほどで退院できるとの外科の主治医の言葉通り、手術翌日からは、「週刊誌を読みたい」とねだるほど、経過は順調だった。東京から駆けつけた長女もホッと胸を撫で下ろした。 ところが、10日ほどすると、その父親がふさぎ込むようになった。顔の表情は能面のように硬くなり、入院直前までしっかりした足取りで歩いていたのに、立ち上がるだけでフラフラする。ひとりでは歩けない。言葉も少なくなり、聞こえないほど、声が小さい。 娘はすぐ異変に気付いた。 手術前の父親は、難しい本でも平気で読んでいたし、...
こんな父ではなかった。 3年前の3月のことだ。兵庫県内の80歳になる男性が腹痛を起こし、神戸市内の公立病院で胃潰瘍と診断された。胃に小さな穴が開いているという。緊急に手術が行われることになった。 小さな穿孔だったので、開腹して脂肪の膜で穴をふさぐ簡単な手術が施された。2週間ほどで退院できるとの外科の主治医の言葉通り、手術翌日からは、「週刊誌を読みたい」とねだるほど、経過は順調だった。東京から駆けつけた長女もホッと胸を撫で下ろした。 ところが、10日ほどすると、その父親がふさぎ込むようになった。顔の表情は能面のように硬くなり、入院直前までしっかりした足取りで歩いていたのに、立ち上がるだけでフラフラする。ひとりでは歩けない。言葉も少なくなり、聞こえないほど、声が小さい。 娘はすぐ異変に気付いた。 手術前の父親は、難しい本でも平気で読んでいたし、週に
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