この国につけるクスリ 社会保障よもやま話
高額療養費支給は保険者責任
東京福祉大学・大学院教授 喜多村悦史
2010年11月1日号
医療サービスは保険料納付の代償であるはずなのに、なぜ窓口で3割もの「一部負担金」を徴収されなければいけないのか。考えてみれば、不思議な話である。 もともと健康保険本人には一部負担金はなかった。賃金水準は今日より低く、病気で欠勤すれば即、賃金カットとなる時分。働き手が傷病を負った世帯から費用徴収するという発想はあり得なかった。 時代は移り、労働者の家計状況は改善、月給制も一般化する。その一方で医療体制の拡充とともに、医療費の高騰が問題になってきた。こうなると窮屈になるのが健保の財政運営。保険料を上げても追いつかない。加入者に受診を手控えてもらうにはどうすべきか。 というわけで、74年(昭和59年)、「受診抑制効果」を企図して、健保本人に1割の一部負担が導入された。風邪引き程度なら、家に籠ってたまご酒を飲んで寝ているほうが経済的だと誘導したわけ...
医療サービスは保険料納付の代償であるはずなのに、なぜ窓口で3割もの「一部負担金」を徴収されなければいけないのか。考えてみれば、不思議な話である。 もともと健康保険本人には一部負担金はなかった。賃金水準は今日より低く、病気で欠勤すれば即、賃金カットとなる時分。働き手が傷病を負った世帯から費用徴収するという発想はあり得なかった。 時代は移り、労働者の家計状況は改善、月給制も一般化する。その一方で医療体制の拡充とともに、医療費の高騰が問題になってきた。こうなると窮屈になるのが健保の財政運営。保険料を上げても追いつかない。加入者に受診を手控えてもらうにはどうすべきか。 というわけで、74年(昭和59年)、「受診抑制効果」を企図して、健保本人に1割の一部負担が導入された。風邪引き程度なら、家に籠ってたまご酒を飲んで寝ているほうが経済的だと誘導したわけだ。
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