From Local to Global 私と公衆衛生
たばこを巡る確執の歴史
第16回
国際医療福祉大学副学長 岩尾總一郎(元厚労省医政局長)
2010年2月1日号
今年の秋から、たばこが値上げされることになった。1箱が300円のものだと400円になるというから、大幅な値上げだ。 ここ20年来、再三にわたってたばこの害が叫ばれながら、総理大臣が「健康目的」と明言してまでたばこの税率を引き上げたことなど、なかったはずだ。それだけ日本社会にはたばこが根付いてしまっていたということだろう。たばこを巡ってさまざまな利害が絡み、その複雑な仕組みを断ち切ることは容易ではなかった。 80年代には、すでにたばこの害が世界的にクローズアップされていた。しかし、健康を預かる日本の厚生省(当時)の反応は鈍かった。禁煙週間行事の記者発表をする担当課長が、会見中に喫煙しても笑い話ですまされる雰囲気があったし、担当局長はヘビースモーカーだった。厚生省内の記者クラブも、もうもうたる煙で、記者自身が禁煙に後ろ向き。十分な施策を打ち出せるは...
今年の秋から、たばこが値上げされることになった。1箱が300円のものだと400円になるというから、大幅な値上げだ。 ここ20年来、再三にわたってたばこの害が叫ばれながら、総理大臣が「健康目的」と明言してまでたばこの税率を引き上げたことなど、なかったはずだ。それだけ日本社会にはたばこが根付いてしまっていたということだろう。たばこを巡ってさまざまな利害が絡み、その複雑な仕組みを断ち切ることは容易ではなかった。 80年代には、すでにたばこの害が世界的にクローズアップされていた。しかし、健康を預かる日本の厚生省(当時)の反応は鈍かった。禁煙週間行事の記者発表をする担当課長が、会見中に喫煙しても笑い話ですまされる雰囲気があったし、担当局長はヘビースモーカーだった。厚生省内の記者クラブも、もうもうたる煙で、記者自身が禁煙に後ろ向き。十分な施策を打ち出せるはずが
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