リーダーのための読書論
変身の勧め
第33回
株式会社ファーマネットワーク 榎戸誠
2009年12月1日号
変身したいと思っても、そう簡単にはいかないものだ。そういうときは、変身物語を読んで、変身した気分を味わうのも一法である。『山月記』(中島敦著、新潮文庫『李陵・山月記』所収)は、中国の古典を素材にした、「詩人に成りそこなって虎になった哀れな男」の変身物語である。 この虎は、「我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」が「己の外形をかくの如く、内心にふさわしいもの(虎)に変えて了(しま)ったのだ」と自嘲的に告白している。この作品は、自己の才能にプライドは持っているが、一流になり切れない詩人の苦悩の物語と変身物語が渾然一体となって、一種独特な雰囲気を醸し出している。『山月記』と同じ本に収められている、中島敦の『李陵』は、中国の歴史書に材を求めた歴史小説である。 紀元前99年、漢の武将・李陵は自ら武帝に願い出て、五千の歩兵とともに、北辺の匈奴を討つべく...
変身したいと思っても、そう簡単にはいかないものだ。そういうときは、変身物語を読んで、変身した気分を味わうのも一法である。『山月記』(中島敦著、新潮文庫『李陵・山月記』所収)は、中国の古典を素材にした、「詩人に成りそこなって虎になった哀れな男」の変身物語である。 この虎は、「我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」が「己の外形をかくの如く、内心にふさわしいもの(虎)に変えて了(しま)ったのだ」と自嘲的に告白している。この作品は、自己の才能にプライドは持っているが、一流になり切れない詩人の苦悩の物語と変身物語が渾然一体となって、一種独特な雰囲気を醸し出している。『山月記』と同じ本に収められている、中島敦の『李陵』は、中国の歴史書に材を求めた歴史小説である。 紀元前99年、漢の武将・李陵は自ら武帝に願い出て、五千の歩兵とともに、北辺の匈奴を討つべく出発
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