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リーダーのための読書論

江戸時代に恐るべき思想家がいた

第29回

イーピーメディカル 榎戸誠

2009年8月1日号

 42年前に『忘れられた思想家——安藤昌益のこと』(E・ハーバート・ノーマン著、大窪愿二訳、岩波新書、上・下巻)を初めて読んだときの衝撃を、今でも鮮やかに覚えている。 ノーマンは、18世紀(江戸時代中期)に安藤昌益という独創的な思想を持った著述家がいたこと、18世紀の中頃に書かれた昌益の著書は1899(明治32)年に狩野亨吉によって発見されるまで長らく後世に知られていなかったこと、その著書は「自然真営道」といい、93冊から成っていることを知り、俄然、興味を惹かれ、丹念に調べてこの書を書き上げたのである。 狩野は、「自然真営道」の稿本(筆写された本)を初めて見たときは著者の思想があまり奇矯なので恐らく狂人ではあるまいかと思ったが、しかし詳しく調べてみると、狂気ではなくて、確かに非凡であり恐らくは天才であると確信するに至ったと述べている。 昌益のそれほど過...  42年前に『忘れられた思想家——安藤昌益のこと』(E・ハーバート・ノーマン著、大窪愿二訳、岩波新書、上・下巻)を初めて読んだときの衝撃を、今でも鮮やかに覚えている。 ノーマンは、18世紀(江戸時代中期)に安藤昌益という独創的な思想を持った著述家がいたこと、18世紀の中頃に書かれた昌益の著書は1899(明治32)年に狩野亨吉によって発見されるまで長らく後世に知られていなかったこと、その著書は「自然真営道」といい、93冊から成っていることを知り、俄然、興味を惹かれ、丹念に調べてこの書を書き上げたのである。 狩野は、「自然真営道」の稿本(筆写された本)を初めて見たときは著者の思想があまり奇矯なので恐らく狂人ではあるまいかと思ったが、しかし詳しく調べてみると、狂気ではなくて、確かに非凡であり恐らくは天才であると確信するに至ったと述べている。 昌益のそれほど過激な

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