現場が望む社会保障制度
オバマケア見直しに考える国民皆保険の意味
第24回
東京財団研究員兼政策プロデューサー 三原 岳
2017年5月1日号
米国のトランプ政権が本格始動し、国民皆保険をめざした制度改革(オバマケア)の見直しが論じられている。民主党、共和党ともに反対意見があり、当初の予定よりも進んでいない印象だが、オバマケアの見直しは普段、国民皆保険を「空気や水」のように感じている日本人にとって、その意味を再考する機会になるかもしれない。 しかし、空気や水がない状態を想像するのが難しいのと同様、国民皆保険のない状態をイメージするのは難しい。これを考えるうえでひとつの素材になるのは米国の映画監督マイケル・ムーアが07年に製作した映画『シッコ(Sicko)』だろう。映画では無保険、低保険の実態を浮き彫りにするため、高額な医療費を払えずに自分で傷口を縫う人など酷い実例を紹介しており、費用を気にせずに公的医療サービスにアクセスできる国民皆保険の価値に気付く。 もうひとつの素材が日本でつくら...
米国のトランプ政権が本格始動し、国民皆保険をめざした制度改革(オバマケア)の見直しが論じられている。民主党、共和党ともに反対意見があり、当初の予定よりも進んでいない印象だが、オバマケアの見直しは普段、国民皆保険を「空気や水」のように感じている日本人にとって、その意味を再考する機会になるかもしれない。 しかし、空気や水がない状態を想像するのが難しいのと同様、国民皆保険のない状態をイメージするのは難しい。これを考えるうえでひとつの素材になるのは米国の映画監督マイケル・ムーアが07年に製作した映画『シッコ(Sicko)』だろう。映画では無保険、低保険の実態を浮き彫りにするため、高額な医療費を払えずに自分で傷口を縫う人など酷い実例を紹介しており、費用を気にせずに公的医療サービスにアクセスできる国民皆保険の価値に気付く。 もうひとつの素材が日本でつくられ
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