医薬経済オンライン

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一筆入魂

30年を迎えた朝日襲撃事件で考えること

世論に忖度して漂流する原点をたどると

ノンフィクション作家 辰濃哲郎

2017年6月1日号

 あれから30年という歳月が流れた。言論を巡る状況は、様変わりしたが、その大きな契機となる事件だった。 87年5月3日。兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に散弾銃を持った男が押し入り、支局にいた3人のうち2人に発砲、当時29歳だった小尻知博記者が搬送先の病院で死亡、もうひとりも重傷を負った襲撃事件だ。すでに時効を迎えたが、「赤報隊」を名乗った犯人は捕まっていない。 私はその直前まで阪神支局員として、亡くなった小尻記者と机を並べていた。事件当時は大阪府警捜査1課の担当で、現場に駆け付けた。まだ鑑識活動を終えていなかったが、原稿を書くために5人の記者が立ち入りを許され、血のりが生々しい支局内で朝刊の執筆にあたったのを覚えている。 その数日後、私は4人の記者とともに事件に専従する「特命班」に加わることになった。デスクからのお達しはひとつだけ。「記事は書...  あれから30年という歳月が流れた。言論を巡る状況は、様変わりしたが、その大きな契機となる事件だった。 87年5月3日。兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に散弾銃を持った男が押し入り、支局にいた3人のうち2人に発砲、当時29歳だった小尻知博記者が搬送先の病院で死亡、もうひとりも重傷を負った襲撃事件だ。すでに時効を迎えたが、「赤報隊」を名乗った犯人は捕まっていない。 私はその直前まで阪神支局員として、亡くなった小尻記者と机を並べていた。事件当時は大阪府警捜査1課の担当で、現場に駆け付けた。まだ鑑識活動を終えていなかったが、原稿を書くために5人の記者が立ち入りを許され、血のりが生々しい支局内で朝刊の執筆にあたったのを覚えている。 その数日後、私は4人の記者とともに事件に専従する「特命班」に加わることになった。デスクからのお達しはひとつだけ。「記事は書かな

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