夢想愚考―わがこころの旅路 | 医薬経済オンライン

時流遡航

夢想愚考―わがこころの旅路

第9回　─尾形仂さんの講演に眼を開かされる─

ジャーナリスト　本田成親

2017年6月1日号

　この際だから、尾形仂さんとドナルド・キーンさんについても思い出話を綴らせてもらおうと思う。本来なら「先生」をつけて記述すべきところなのであるが、大岡信、谷川俊太郎の両先生についても「さん」付け呼称で通させてもらったので、それに倣い、ここでも一貫して「さん」づけ表記を用いることをお許し願いたい。　今は亡き尾形さんは、前回５月15日号で紹介した96年の「奥の細道文学賞」授賞式において、大岡さんとキーンさんを交えた３人の選考委員を代表し、受賞作品の内容を詳細に講評してくださった。　授賞式当日、会場入りした私は、極度の緊張に身を強張らせながら、案内係に導かれるまま指定された席に着いた。すると、すでに私の左隣の席に座っておられたスーツ姿の紳士から、「気を楽になさってください」と一言声を掛けられた。実はこの人物こそがほかならぬ尾形さんだったのだ。壇上... 　この際だから、尾形仂さんとドナルド・キーンさんについても思い出話を綴らせてもらおうと思う。本来なら「先生」をつけて記述すべきところなのであるが、大岡信、谷川俊太郎の両先生についても「さん」付け呼称で通させてもらったので、それに倣い、ここでも一貫して「さん」づけ表記を用いることをお許し願いたい。　今は亡き尾形さんは、前回５月15日号で紹介した96年の「奥の細道文学賞」授賞式において、大岡さんとキーンさんを交えた３人の選考委員を代表し、受賞作品の内容を詳細に講評してくださった。　授賞式当日、会場入りした私は、極度の緊張に身を強張らせながら、案内係に導かれるまま指定された席に着いた。すると、すでに私の左隣の席に座っておられたスーツ姿の紳士から、「気を楽になさってください」と一言声を掛けられた。実はこの人物こそがほかならぬ尾形さんだったのだ。壇上で賞

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