医薬経済オンライン

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読む医療―医師が書いた本の斜め読み―

「現代医学教」からの脱皮は「家族」

第74回

鍛冶孝雄

2017年6月1日号

 子どもたちは病院で生まれた。読書子の私は、妻が出産したときから現在まで普通のことだと思い、大きな疑問を持ったことはない。だが、自分自身は兄弟も含めて皆、自宅で生まれた。田舎町に暮らしていたこともあるが、両親は自宅で分娩することが普通だと当時は疑っていなかったに違いない。 妹が生まれたときの光景を覚えている。前夜からいかにもベテランといった助産婦が母に付き添い、近隣の女性たちが大鍋に湯を沸かし続けていた。出産時の母の表情を見ることはできなかったが、助産婦や周囲の女性たちのいそいそとした動きや、屈託のない笑い声が絶えなかったことをありありと思い出せる。とても寒い日で大鍋から立ち上がる大量の湯気までが、女性たちの声に交じって祝祭の日であることを告げているように見えた。 病院で生まれた自分の子は、そうした光景とは無縁だった。私が最初にわが子と...  子どもたちは病院で生まれた。読書子の私は、妻が出産したときから現在まで普通のことだと思い、大きな疑問を持ったことはない。だが、自分自身は兄弟も含めて皆、自宅で生まれた。田舎町に暮らしていたこともあるが、両親は自宅で分娩することが普通だと当時は疑っていなかったに違いない。 妹が生まれたときの光景を覚えている。前夜からいかにもベテランといった助産婦が母に付き添い、近隣の女性たちが大鍋に湯を沸かし続けていた。出産時の母の表情を見ることはできなかったが、助産婦や周囲の女性たちのいそいそとした動きや、屈託のない笑い声が絶えなかったことをありありと思い出せる。とても寒い日で大鍋から立ち上がる大量の湯気までが、女性たちの声に交じって祝祭の日であることを告げているように見えた。 病院で生まれた自分の子は、そうした光景とは無縁だった。私が最初にわが子と対面

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