医薬経済オンライン

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移植医・大島伸一回顧録

移植前夜

第1回

ノンフィクション・ライター 髙橋幸春

2017年7月1日号

 臓器移植法が施行されたのは、97年10月のことだ。これによって脳死を人間の死と認め、日本で脳死移植の道が開かれた。あれから20年の歳月が流れようとしている。 しかし、ドナーが圧倒的に不足している現実は何も変わってはいない。日本臓器移植ネットワークによると、移植希望登録者1万3700人のうち、最も多いのは腎臓移植で、1万2432人(いずれも17年3月末現在)。そのうち16年に移植を受けることができたのはわずかに177人だ。 こうした現実を背景にして、05年9月には臓器売買による腎移植手術が愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で行われるという事件が起きた。臓器移植法はその11条で、臓器売買を禁止している。この事件を契機に予想もしていなかった事実が次々に明らかになった。宇和島徳洲会病院は、執刀医である万波誠らが行っていた腎移植の中に、病気の治療目的で摘出した...  臓器移植法が施行されたのは、97年10月のことだ。これによって脳死を人間の死と認め、日本で脳死移植の道が開かれた。あれから20年の歳月が流れようとしている。 しかし、ドナーが圧倒的に不足している現実は何も変わってはいない。日本臓器移植ネットワークによると、移植希望登録者1万3700人のうち、最も多いのは腎臓移植で、1万2432人(いずれも17年3月末現在)。そのうち16年に移植を受けることができたのはわずかに177人だ。 こうした現実を背景にして、05年9月には臓器売買による腎移植手術が愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で行われるという事件が起きた。臓器移植法はその11条で、臓器売買を禁止している。この事件を契機に予想もしていなかった事実が次々に明らかになった。宇和島徳洲会病院は、執刀医である万波誠らが行っていた腎移植の中に、病気の治療目的で摘出した腎臓

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