医薬経済オンライン

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移植医・大島伸一回顧録

無脳児

第8回

ノンフィクション・ライター 髙橋幸春

2017年10月15日号

 70年代後半、中京病院で精力的に移植手術をこなしていた大島伸一がそうだったように、日本の移植医たちは苦悩していた。生体腎移植で健康なドナーにメスを入れている一方で、思うような成績を出せていなかったからだ。 78年には愛知県など3県1市で東海腎臓バンクが設立され、死体腎移植を推進する動きも出てきた。だが、死体からの臓器を使った移植は、生体間のそれよりもさらに生着率が落ちるという厳しい現実が横たわっている。適合性の落ちるレシピエントに移植し、思ったような移植実績が残せないという悪循環、負のスパイラルに、ここでも直面せざるを得なかった。 それでも生体腎移植を減らし、欧米並みに死体腎移植を増やしていくには、まず救急医をはじめとする臨床医を説得する必要がある。彼らに、亡くなった患者家族に臓器提供を説得してもらうしか術がない。 東海腎臓バンクの設立後...  70年代後半、中京病院で精力的に移植手術をこなしていた大島伸一がそうだったように、日本の移植医たちは苦悩していた。生体腎移植で健康なドナーにメスを入れている一方で、思うような成績を出せていなかったからだ。 78年には愛知県など3県1市で東海腎臓バンクが設立され、死体腎移植を推進する動きも出てきた。だが、死体からの臓器を使った移植は、生体間のそれよりもさらに生着率が落ちるという厳しい現実が横たわっている。適合性の落ちるレシピエントに移植し、思ったような移植実績が残せないという悪循環、負のスパイラルに、ここでも直面せざるを得なかった。 それでも生体腎移植を減らし、欧米並みに死体腎移植を増やしていくには、まず救急医をはじめとする臨床医を説得する必要がある。彼らに、亡くなった患者家族に臓器提供を説得してもらうしか術がない。 東海腎臓バンクの設立後、名

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