医薬経済オンライン

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移植医・大島伸一回顧録

シクロスポリン

第9回

ノンフィクション・ライター 髙橋幸春

2017年11月1日号

 大島伸一が勤務している中京病院にやってくるのは、患者ばかりではない。小児科に入院中の子どもたちのケアをするために、ボランティアの人たちも出入りする。そのなかに、60歳前の女性がいた。 その女性が胆石症にかかったため、中京病院で胆石を取るための手術を受けることになった。彼女は大島にこう告げた。「大島先生、腎臓はひとつあればいいんでしょう。胆石の手術のついでに、私から腎臓をひとつ取ってよ、それを子どもたちに移植してあげて」 まるで弁当でも分け与えるかのような言い方だった。当時、中京病院では4人の子どもが透析を受けていた。透析治療がいかに過酷な医療か、子どもたちの表情を見ていればすぐに理解できる。女性は、透析で身体の成長が止まってしまうことも知っていた。 だが、移植をするには、血液型などの適合性の問題もある。生体腎移植のドナーは、肉親や家族に...  大島伸一が勤務している中京病院にやってくるのは、患者ばかりではない。小児科に入院中の子どもたちのケアをするために、ボランティアの人たちも出入りする。そのなかに、60歳前の女性がいた。 その女性が胆石症にかかったため、中京病院で胆石を取るための手術を受けることになった。彼女は大島にこう告げた。「大島先生、腎臓はひとつあればいいんでしょう。胆石の手術のついでに、私から腎臓をひとつ取ってよ、それを子どもたちに移植してあげて」 まるで弁当でも分け与えるかのような言い方だった。当時、中京病院では4人の子どもが透析を受けていた。透析治療がいかに過酷な医療か、子どもたちの表情を見ていればすぐに理解できる。女性は、透析で身体の成長が止まってしまうことも知っていた。 だが、移植をするには、血液型などの適合性の問題もある。生体腎移植のドナーは、肉親や家族に限ら

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