時流遡航
夢想愚考―わがこころの旅路
第19回 ─渡辺淳さんとの交流を回想する②─
本田成親
2017年11月15日号
見るからに古びた玄関の引き戸が、「そろそろお役目御免にしてくださいよ」とでも哀願するかのような音を立てて開いた。誰でもご自由にどうぞと言わんばかりに、いっさい施錠などしてないところがいかにもこの人らしかった。 私たちが入ろうとすると、すぐに気配を察して2匹の猫が駆け寄ってきた。さっそく化け猫さまのお出迎えかと思いきや、奥から現れた2匹は何とも人なつこそうな顔をしているではないか。1匹は体の大きなヒマラヤン種の猫、もう1匹は短毛雑種の日本猫だった。「お銀ちゃん!」というご主人さまの呼びかけにすぐ反応したところをみると、それがヒマヤランのほうの名前らしかった。続いて渡辺さんは雑種の日本猫のほうに向かって「コラコラ……」と声をかけた。私は、一瞬、その猫が何か悪さでもしかけたのかと思ったが、なんと「コラコラ」とはその猫の名前だったのだ。まだ子猫...
見るからに古びた玄関の引き戸が、「そろそろお役目御免にしてくださいよ」とでも哀願するかのような音を立てて開いた。誰でもご自由にどうぞと言わんばかりに、いっさい施錠などしてないところがいかにもこの人らしかった。 私たちが入ろうとすると、すぐに気配を察して2匹の猫が駆け寄ってきた。さっそく化け猫さまのお出迎えかと思いきや、奥から現れた2匹は何とも人なつこそうな顔をしているではないか。1匹は体の大きなヒマラヤン種の猫、もう1匹は短毛雑種の日本猫だった。「お銀ちゃん!」というご主人さまの呼びかけにすぐ反応したところをみると、それがヒマヤランのほうの名前らしかった。続いて渡辺さんは雑種の日本猫のほうに向かって「コラコラ……」と声をかけた。私は、一瞬、その猫が何か悪さでもしかけたのかと思ったが、なんと「コラコラ」とはその猫の名前だったのだ。まだ子猫だっ
有料会員限定
会員登録(有料)
この記事をお読みいただくためには、会員登録(有料)が必要です。
新規会員登録とマイページ > 購読情報から購入手続きをお願いいたします。
※IDをお持ちの方はログインからお進みください
【会員登録方法】
会員登録をクリックしていただくと、新規会員仮登録メール送信画面に移動します。
メールアドレスを入力して会員登録をお願い致します。
1ユーザーごとの登録をお願い致します。(1ユーザー1アカウントです)
ログイン
会員登録