時流遡航
夢想愚考―わがこころの旅路
第3回 ─渡辺淳さんとの交流を回想する─
本田成親
2017年12月1日号
一生に一度お目にかかれるかどうかの松茸御飯が、粗食に慣れきった身のメンタリティに及ぼす影響力は想像以上に凄まじかった。おかげで食後すっかり調子に乗った私は、夜の更け行くのも忘れ、ここぞとばかりに、渡辺淳山椒庵主の具え持つ並外れた創造力の秘密の解明に取り掛かった。こちらの遠慮のない追及に観念なさったのか、渡辺さんはユーモアたっぷりの語り口で、自らの人生の歩みと、「画歴」というよりは「蛾歴」とでも言ったほうがよさそうな独特の絵の世界の舞台裏を洗いざらい話してくださった。 貧しさゆえに生後まもなく大飯町川上の渡辺家へ養子に出されたこと、小学2年生のとき、学校で怪我をした自分をおぶって家まで送ってくださった若い綺麗な女の先生の柔らかな背中や美しいうなじが忘れられず、ほのかな慕いと憧れを込めて女の人の姿を描き始めたのが絵の世界に興味をもつ直接の...
一生に一度お目にかかれるかどうかの松茸御飯が、粗食に慣れきった身のメンタリティに及ぼす影響力は想像以上に凄まじかった。おかげで食後すっかり調子に乗った私は、夜の更け行くのも忘れ、ここぞとばかりに、渡辺淳山椒庵主の具え持つ並外れた創造力の秘密の解明に取り掛かった。こちらの遠慮のない追及に観念なさったのか、渡辺さんはユーモアたっぷりの語り口で、自らの人生の歩みと、「画歴」というよりは「蛾歴」とでも言ったほうがよさそうな独特の絵の世界の舞台裏を洗いざらい話してくださった。 貧しさゆえに生後まもなく大飯町川上の渡辺家へ養子に出されたこと、小学2年生のとき、学校で怪我をした自分をおぶって家まで送ってくださった若い綺麗な女の先生の柔らかな背中や美しいうなじが忘れられず、ほのかな慕いと憧れを込めて女の人の姿を描き始めたのが絵の世界に興味をもつ直接の契機
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