医薬経済オンライン

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一筆入魂

「忖度」が招く暴政を考える

日本の美風も使い方を間違えれば

ノンフィクション作家 辰濃哲郎

2018年1月1日号

「忖度による服従が意味するのは、熟慮もせずに新しい状況に本能的に適応することなのです」 米国の歴史学者でファシズムやナチズム、ホロコースト研究で知られるティモシー・スナイダーの著書『暴政』(慶應義塾大学出版会・池田年穂訳)に書かれていた言葉だ。 筆者はファシズムなどが形成されていく過程では、権威主義的な匂いを感じ取った官僚だけでなく市民までもが本能的に順応するための忖度を重ねていった結果、「暴政」はいとも簡単に浸透して不可逆的な状況に陥ってしまう。これは歴史的考証に基づいている警告だと指摘している。 ヒトラーにしろ全体主義にしろ、為政者は当初、自らの価値観が市民に浸透していくことなど期待はしていなかったという。例えば、ヒトラーが政権を奪取した1932年のドイツ選挙では、有権者の熟慮を欠いた服従が時代を後戻りできない窮地に陥れた。 ドイツ... 「忖度による服従が意味するのは、熟慮もせずに新しい状況に本能的に適応することなのです」 米国の歴史学者でファシズムやナチズム、ホロコースト研究で知られるティモシー・スナイダーの著書『暴政』(慶應義塾大学出版会・池田年穂訳)に書かれていた言葉だ。 筆者はファシズムなどが形成されていく過程では、権威主義的な匂いを感じ取った官僚だけでなく市民までもが本能的に順応するための忖度を重ねていった結果、「暴政」はいとも簡単に浸透して不可逆的な状況に陥ってしまう。これは歴史的考証に基づいている警告だと指摘している。 ヒトラーにしろ全体主義にしろ、為政者は当初、自らの価値観が市民に浸透していくことなど期待はしていなかったという。例えば、ヒトラーが政権を奪取した1932年のドイツ選挙では、有権者の熟慮を欠いた服従が時代を後戻りできない窮地に陥れた。 ドイツがソ

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