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一筆入魂

父の死をもって考える尊厳死とは

いずれにしても後悔する延命治療の選択

ノンフィクション作家 辰濃哲郎

2018年1月15日号

 88歳になる父が亡くなる1ヵ月ほど前のことだ。 病院のベッドに横たわる父の呼吸は荒く、喘いでいるようだった。眉間のしわが、いかにも苦しそうだ。長男として医師と相談しながら決めていた治療方針が、間違っていたのかもしれない。 心が揺れた。 病院からの帰り道は、いつもバスを使わないで30分ほどの道のりを歩いて帰る。悪化していく父の容態に滅入る気持ちを切り替えるためだ。自分の親とはいえ、人の命が自分の手に委ねられていると思うと、責任の重さに圧し潰されそうになる。父の命の期限を決めてしまったのではないか。深い後悔の念に襲われていた。 朝日新聞の天声人語を約13年、ひとりで書き続けた父は、書くことが好きだった。退職してからも、さほど多くはないが、岩波新書などから本を出していた。それが12年2月に頸椎の大手術をしてからというもの、ほとんど仕事らしい仕事がで...  88歳になる父が亡くなる1ヵ月ほど前のことだ。 病院のベッドに横たわる父の呼吸は荒く、喘いでいるようだった。眉間のしわが、いかにも苦しそうだ。長男として医師と相談しながら決めていた治療方針が、間違っていたのかもしれない。 心が揺れた。 病院からの帰り道は、いつもバスを使わないで30分ほどの道のりを歩いて帰る。悪化していく父の容態に滅入る気持ちを切り替えるためだ。自分の親とはいえ、人の命が自分の手に委ねられていると思うと、責任の重さに圧し潰されそうになる。父の命の期限を決めてしまったのではないか。深い後悔の念に襲われていた。 朝日新聞の天声人語を約13年、ひとりで書き続けた父は、書くことが好きだった。退職してからも、さほど多くはないが、岩波新書などから本を出していた。それが12年2月に頸椎の大手術をしてからというもの、ほとんど仕事らしい仕事ができて

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