読む医療―医師が書いた本の斜め読み―
本質を探って薬物療法計画を練る
第89回
鍛冶孝雄
2018年1月15日号
初めて就職してからすぐのことだが、配属された部署のトップが少し変わった人だった。彼はいつも天真爛漫に近いとしか思えない笑顔で若い社員に接し、酒席では「私はこれまで挫折したことがない」と繰り返すのだが、私はこの上司が大変苦手だった。デスクに呼ばれて話しかけられるととても憂鬱で、人間関係という厄介なものに関する人生最初の「挫折」を味わわせてくれた。密かにではあるが、彼は精神異常ではないかと疑い、心の中ではいつも罵っていた。今となってよく考えてみれば、彼はごく普通の人であり(職場での関係がなければ好人物かも)、それが嫌で仕方がなかった私のほうがおかしかったかのかもしれない。だが、「挫折を知らない」ことを自慢されるのは、苦痛なものである。 人は自分を尺度に相手を測る。私は進学では早々に挫折したし、かなり長く打ち込んだ運動でも身体能力差を撥ね返...
初めて就職してからすぐのことだが、配属された部署のトップが少し変わった人だった。彼はいつも天真爛漫に近いとしか思えない笑顔で若い社員に接し、酒席では「私はこれまで挫折したことがない」と繰り返すのだが、私はこの上司が大変苦手だった。デスクに呼ばれて話しかけられるととても憂鬱で、人間関係という厄介なものに関する人生最初の「挫折」を味わわせてくれた。密かにではあるが、彼は精神異常ではないかと疑い、心の中ではいつも罵っていた。今となってよく考えてみれば、彼はごく普通の人であり(職場での関係がなければ好人物かも)、それが嫌で仕方がなかった私のほうがおかしかったかのかもしれない。だが、「挫折を知らない」ことを自慢されるのは、苦痛なものである。 人は自分を尺度に相手を測る。私は進学では早々に挫折したし、かなり長く打ち込んだ運動でも身体能力差を撥ね返せず
有料会員限定
会員登録(有料)
この記事をお読みいただくためには、会員登録(有料)が必要です。
新規会員登録とマイページ > 購読情報から購入手続きをお願いいたします。
※IDをお持ちの方はログインからお進みください
【会員登録方法】
会員登録をクリックしていただくと、新規会員仮登録メール送信画面に移動します。
メールアドレスを入力して会員登録をお願い致します。
1ユーザーごとの登録をお願い致します。(1ユーザー1アカウントです)
ログイン
会員登録