健康格差は社会的、経済的格差が要因（上）

読む医療―医師が書いた本の斜め読み―

第90回

鍛冶孝雄

2018年2月1日号

　読書子である私は、何度か記してきたが九州の半農半漁の集落で育った。集落は河口の三角州にあった。自然は豊かだが、海苔の養殖はあったものの、集落の人びとの暮らしは総じて貧しかった。　三角州には街へ渡る２つの橋があったが、その橋を渡ると旧城下町の面影を残す閑静な住宅街とそれに接する商店街が賑わい、集落の人びとの暮らしとの違いは、あまりにも歴然としていた。住宅街は、大企業支店で働くサラリーマン、公務員、商店主たちの住居で、集落側から見れば邸宅だった。　集落の子どもたちは、３キロほど離れた街に建つ小学校に通った。当然のことだが、集落の子どもと街場の子どもが混在する学級は、貧富の差を子どもたちに認識させるのに十分な環境だった。集落の子どもは総じて身なりはみすぼらしく、同じ服をずっと着ていた。学校でのテスト結果はいつも、街の子どもの圧勝だった。給食... 　読書子である私は、何度か記してきたが九州の半農半漁の集落で育った。集落は河口の三角州にあった。自然は豊かだが、海苔の養殖はあったものの、集落の人びとの暮らしは総じて貧しかった。　三角州には街へ渡る２つの橋があったが、その橋を渡ると旧城下町の面影を残す閑静な住宅街とそれに接する商店街が賑わい、集落の人びとの暮らしとの違いは、あまりにも歴然としていた。住宅街は、大企業支店で働くサラリーマン、公務員、商店主たちの住居で、集落側から見れば邸宅だった。　集落の子どもたちは、３キロほど離れた街に建つ小学校に通った。当然のことだが、集落の子どもと街場の子どもが混在する学級は、貧富の差を子どもたちに認識させるのに十分な環境だった。集落の子どもは総じて身なりはみすぼらしく、同じ服をずっと着ていた。学校でのテスト結果はいつも、街の子どもの圧勝だった。給食には

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