一筆入魂
恐怖と負い目に抗い続けた記者
朝日襲撃で「生き残った」先輩の訃報
ノンフィクション作家 辰濃哲郎
2018年2月1日号
朝日新聞阪神支局が覆面の男に襲われたのは1987年だから、もう30年以上も前の話になる。朝日をターゲットとした警察庁指定116号事件の発端となった事件だ。 支局にいた3人の記者のうち29歳だった小尻知博記者が死亡し、右の掌の3分の1ほどを散弾銃によって吹き飛ばされる重傷を負ったのが、当時42歳の犬飼兵衛記者だった。至近距離で撃たれ、あと2ミリで散弾が心臓に達するほどだったが、一命を取りとめた。 その後、犬飼さんは小尻の死と、記者として書き続けることとの狭間で揺れることになる。 私と犬飼さんの出会いは、事件の2年前に遡る。私が初任地から阪神支局に転勤した1年後の85年に、犬飼さんが転勤でやってきた。 私より一回り年上で、無愛想なおじさんだった。上司にもおべんちゃらを言わないし、人を褒めるのを聞いたことがない。絵に描いたような偏屈で、いつも難しい...
朝日新聞阪神支局が覆面の男に襲われたのは1987年だから、もう30年以上も前の話になる。朝日をターゲットとした警察庁指定116号事件の発端となった事件だ。 支局にいた3人の記者のうち29歳だった小尻知博記者が死亡し、右の掌の3分の1ほどを散弾銃によって吹き飛ばされる重傷を負ったのが、当時42歳の犬飼兵衛記者だった。至近距離で撃たれ、あと2ミリで散弾が心臓に達するほどだったが、一命を取りとめた。 その後、犬飼さんは小尻の死と、記者として書き続けることとの狭間で揺れることになる。 私と犬飼さんの出会いは、事件の2年前に遡る。私が初任地から阪神支局に転勤した1年後の85年に、犬飼さんが転勤でやってきた。 私より一回り年上で、無愛想なおじさんだった。上司にもおべんちゃらを言わないし、人を褒めるのを聞いたことがない。絵に描いたような偏屈で、いつも難しい顔を
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