政治的空間をチャンスと捉える「葛藤」

読む医療—医師が書いた本の斜め読み—

政治的空間をチャンスと捉える「葛藤」

第94回

鍛冶孝雄

2018年4月1日号

　個人的な思いだが、昨年12月に米国のドナルド・トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムとすると発表したとき、何とも言えない嫌な気持ちになった。　この報道を「嫌な気持ち」としか表現できない、論理的に反応できないというのは私の無知を晒しているようなものだが、ユダヤ教だけの聖地として認めるという一方的な政策は、そのことでこれから起きるであろう、いろんな悲劇を予感させ、暗澹とさせる。　私にはユダヤ人に対する差別感情はまったくない。ユダヤ人が受けた悲惨な被害の歴史も知っている。そして、何千年という彼の地での宗教的対立が今も世界の不安の大きな要素であることも……。　このような宗教的対立、民族対立、イデオロギー対立はむろん、紛争の出発点となる。紛争はそこに住む人々の死を招き、身体的被害を与え、公衆衛生の欠如を拡大して感染症などのリスクを広げ、食糧難... 　個人的な思いだが、昨年12月に米国のドナルド・トランプ大統領がイスラエルの首都をエルサレムとすると発表したとき、何とも言えない嫌な気持ちになった。　この報道を「嫌な気持ち」としか表現できない、論理的に反応できないというのは私の無知を晒しているようなものだが、ユダヤ教だけの聖地として認めるという一方的な政策は、そのことでこれから起きるであろう、いろんな悲劇を予感させ、暗澹とさせる。　私にはユダヤ人に対する差別感情はまったくない。ユダヤ人が受けた悲惨な被害の歴史も知っている。そして、何千年という彼の地での宗教的対立が今も世界の不安の大きな要素であることも……。　このような宗教的対立、民族対立、イデオロギー対立はむろん、紛争の出発点となる。紛争はそこに住む人々の死を招き、身体的被害を与え、公衆衛生の欠如を拡大して感染症などのリスクを広げ、食糧難をつ

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