医薬経済オンライン

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読む医療ー医師が書いた本の斜め読みー

対処しようのない事態に耐える「力」

第95回

鍛冶孝雄

2018年4月15日号

 10年前に感染性胃腸炎に罹ったことがある。高熱と悪寒、激しい下痢で、這うように近所の医療機関に行った。解熱剤が奏効したのか、熱は1日でほぼ下がったが、下痢はなかなか治まらない。2日後に再診すると、担当医は私と同年代と思しき女医さんに代わっていた。熱は下がったのになぜ下痢は止まらないのかと不服気味に訴えた私に、彼女はニコリと笑って、「あとは日にち薬だから」と言った。「日にち薬」とは初めて聞いた。両親はじめ、私より年かさの人たちからもそういう言葉は聞いたことがなかった。「どういう意味ですか」と尋ねた。「熱は下がったから下痢もそのうち治まってくると思いますよ。ただ、少し時間がいる。時間が治してくれる、時間が薬、という意味で日にち薬って言うのよ」ということで、もう薬は必要ない、とも付け加えた。とてもいいドクターに巡り合ったように思えた。 日にち...  10年前に感染性胃腸炎に罹ったことがある。高熱と悪寒、激しい下痢で、這うように近所の医療機関に行った。解熱剤が奏効したのか、熱は1日でほぼ下がったが、下痢はなかなか治まらない。2日後に再診すると、担当医は私と同年代と思しき女医さんに代わっていた。熱は下がったのになぜ下痢は止まらないのかと不服気味に訴えた私に、彼女はニコリと笑って、「あとは日にち薬だから」と言った。「日にち薬」とは初めて聞いた。両親はじめ、私より年かさの人たちからもそういう言葉は聞いたことがなかった。「どういう意味ですか」と尋ねた。「熱は下がったから下痢もそのうち治まってくると思いますよ。ただ、少し時間がいる。時間が治してくれる、時間が薬、という意味で日にち薬って言うのよ」ということで、もう薬は必要ない、とも付け加えた。とてもいいドクターに巡り合ったように思えた。 日にち薬と

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