読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
情報化社会で消えていく「雑音」
第96回
鍛冶孝雄
2018年5月1日号
若い人と話すときに気を付けているつもりなのが、「昔はよかった」という言葉を吐かないことである。海辺の小さな漁師町で育ったので、自然に抱かれて、今から考えるとパラダイスのような子ども時代を過ごした。成人直前に大都会に出たが、社会はやさしく、自分で考える暮らしや行動ができた。つまり自由だった。言われなくても「皆違う、でもそれでいい」という根拠がそれなりにあった。 それらをすべて挙げて、昔はよかったというのは身勝手で、若い人には理解されるはずがない。今の若い人たちの置かれた環境は冷淡で不自由さに満ちている、と常々感じるし、その感じ方はかなりの速度で強さを増している。 なぜ、「昔はよかった」と言わないか。反論が予想されるからだ。ひとつは「それはあなたたちのせいでしょう」、もうひとつは「昔はコンビニもスマホもなく、不便だったでしょう」。再反論の...
若い人と話すときに気を付けているつもりなのが、「昔はよかった」という言葉を吐かないことである。海辺の小さな漁師町で育ったので、自然に抱かれて、今から考えるとパラダイスのような子ども時代を過ごした。成人直前に大都会に出たが、社会はやさしく、自分で考える暮らしや行動ができた。つまり自由だった。言われなくても「皆違う、でもそれでいい」という根拠がそれなりにあった。 それらをすべて挙げて、昔はよかったというのは身勝手で、若い人には理解されるはずがない。今の若い人たちの置かれた環境は冷淡で不自由さに満ちている、と常々感じるし、その感じ方はかなりの速度で強さを増している。 なぜ、「昔はよかった」と言わないか。反論が予想されるからだ。ひとつは「それはあなたたちのせいでしょう」、もうひとつは「昔はコンビニもスマホもなく、不便だったでしょう」。再反論の言葉
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