誰がための「精密医療」か
世界が狂奔する人類の標本化
神戸市議会議員・元国会議員政策秘書 岡田裕二
2018年6月15日号
生まれて間もない頃からその子どもはいつも体をぶるぶる震わせていた。親は可能な限り、あらゆる検査を受けさせてみたが、その原因はまったくわからなかった。痛みをも伴うさまざまな試みが3年間続けられた後に、ようやく原因が明らかになった。遺伝子変異で涙を生成できなかったのだ。 子どもは瞬きするたびに、サンドペーパーで角膜をこするような痛みを受けていた。これは、米国デューク大学の研究グループが、父子の遺伝子を比較検証した後に明らかになった。今年11歳になった子どもは、遺伝子情報を基盤とする「精密医療」(プレシジョン・メディシン)によって、苦痛から解放されている。 遺伝子分析とデータ処理技術の双方を土台にしたこの新しい医療がなかったら、子どもはいまだひどい痛みの中に悶え苦しんでいたかもしれない。安価になったゲノム解析「精密医療」という言葉は、15年に米...
生まれて間もない頃からその子どもはいつも体をぶるぶる震わせていた。親は可能な限り、あらゆる検査を受けさせてみたが、その原因はまったくわからなかった。痛みをも伴うさまざまな試みが3年間続けられた後に、ようやく原因が明らかになった。遺伝子変異で涙を生成できなかったのだ。 子どもは瞬きするたびに、サンドペーパーで角膜をこするような痛みを受けていた。これは、米国デューク大学の研究グループが、父子の遺伝子を比較検証した後に明らかになった。今年11歳になった子どもは、遺伝子情報を基盤とする「精密医療」(プレシジョン・メディシン)によって、苦痛から解放されている。 遺伝子分析とデータ処理技術の双方を土台にしたこの新しい医療がなかったら、子どもはいまだひどい痛みの中に悶え苦しんでいたかもしれない。安価になったゲノム解析「精密医療」という言葉は、15年に米国の
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