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一筆入魂

吉田投手の881球は果たして「酷使」なのか

「スポ根」受難の時代を考える

ノンフィクション作家  辰濃哲郎

2018年9月15日号

 幼少の頃から馴染んできたスポ根物語が、今や受難の時代を迎えている。40度近い炎天下で開かれる夏の甲子園大会も、ネットでは非難の嵐だ。ブラック部活動も敬遠され、きっと夏の暑い盛りの運動部に「自粛」が言い渡されるのも時間の問題かもしれない。 この夏、甲子園で5試合を投げ抜いた秋田県・金足農業の吉田輝星投手の活躍は、東北に初の優勝旗をという夢を運んでくれたが、一方では881球という球数が話題になっている。 これまでの夏の甲子園大会で球数の多かった上位選手のうち、プロ野球で大成しているのは、98年に優勝した横浜の松坂大輔投手(767球)や、06年に準優勝した駒大苫小牧の田中将大投手(658球)くらいらしい。これが甲子園での酷使によるものではないかという批判だ。 だが、その原因を甲子園での肩の酷使に結びつけるのは早計だ。 まず、そもそも甲子園で活躍し...  幼少の頃から馴染んできたスポ根物語が、今や受難の時代を迎えている。40度近い炎天下で開かれる夏の甲子園大会も、ネットでは非難の嵐だ。ブラック部活動も敬遠され、きっと夏の暑い盛りの運動部に「自粛」が言い渡されるのも時間の問題かもしれない。 この夏、甲子園で5試合を投げ抜いた秋田県・金足農業の吉田輝星投手の活躍は、東北に初の優勝旗をという夢を運んでくれたが、一方では881球という球数が話題になっている。 これまでの夏の甲子園大会で球数の多かった上位選手のうち、プロ野球で大成しているのは、98年に優勝した横浜の松坂大輔投手(767球)や、06年に準優勝した駒大苫小牧の田中将大投手(658球)くらいらしい。これが甲子園での酷使によるものではないかという批判だ。 だが、その原因を甲子園での肩の酷使に結びつけるのは早計だ。 まず、そもそも甲子園で活躍した選

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