読む医療—医師が書いた本の斜め読み—
死者との対話で彼らの人権を守る
第106回
鍛冶孝雄
2018年10月1日号
今回の読書はロングセラー本。上野正彦著『死体は語る』は、89年9月に時事通信から刊行され、01年まで85刷70万部超を記録した。01年10月に文藝春秋が文庫化し、これも昨年6月には19刷を数えている。ほぼ30年間にわたって多数の読者を獲得した稀な図書だ。 テレビドラマシリーズの原案にも何度かなったとされ、ミステリー・エンタテイメントの原資料としての価値も認められている。やはり現実にあった死体検案のリアリティは色褪せないのだろう。同氏には、犯罪心理学や監察医の視点をテーマにした著作も多数ある。 読書子の私はかつて松本清張がインタビューに答えて、ミステリー小説は、動機、トリックも重要だが、小説を面白くするには殺害方法と死体の処置をどうするかにあると語っていたのを覚えている。食べてしまう餅や、溶けてしまう氷を凶器にするというアイデア、違法な逢引宿に死体を放棄...
今回の読書はロングセラー本。上野正彦著『死体は語る』は、89年9月に時事通信から刊行され、01年まで85刷70万部超を記録した。01年10月に文藝春秋が文庫化し、これも昨年6月には19刷を数えている。ほぼ30年間にわたって多数の読者を獲得した稀な図書だ。 テレビドラマシリーズの原案にも何度かなったとされ、ミステリー・エンタテイメントの原資料としての価値も認められている。やはり現実にあった死体検案のリアリティは色褪せないのだろう。同氏には、犯罪心理学や監察医の視点をテーマにした著作も多数ある。 読書子の私はかつて松本清張がインタビューに答えて、ミステリー小説は、動機、トリックも重要だが、小説を面白くするには殺害方法と死体の処置をどうするかにあると語っていたのを覚えている。食べてしまう餅や、溶けてしまう氷を凶器にするというアイデア、違法な逢引宿に死体を放棄し、
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