医薬経済オンライン

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読む医療ー医師が書いた本の斜め読みー

高齢者医療に沿わない「医学的正解」

第115回

鍛冶孝雄

2019年2月15日号

 大学生になって初めてのアルバイトは製本工場だった。与えられた仕事場は検品。糊付けが効き過ぎていないか、乱丁・落丁の有無の確認などだが、作業はほとんどがパートの女性たちで、束ねる社員は高年の職長男性がひとり。職長は作業進行管理、検品後の本の梱包、などの雑用を一手に引き受けており、私は彼の助手役だった。 彼は60歳近かったが、中国に従軍した経験があり、鼻梁に銃創があった。戦争賛美的な彼の中国話には辟易したが、江戸弁での戦前の東京話は面白かった。私が働き始めて1ヵ月ほど過ぎて、彼は自宅アパートで心臓発作を起こし、その後長く休んだ。 職場ではアルバイトの私に、彼の任が押し付けられた。詳細は省くが、検品作業の進行管理は意外に複雑で、いつの間にかそれを覚えた私を会社は頼った。冬休みは時給を倍近くにして働かされた。そんなとき、職長が復帰したが、3日目...  大学生になって初めてのアルバイトは製本工場だった。与えられた仕事場は検品。糊付けが効き過ぎていないか、乱丁・落丁の有無の確認などだが、作業はほとんどがパートの女性たちで、束ねる社員は高年の職長男性がひとり。職長は作業進行管理、検品後の本の梱包、などの雑用を一手に引き受けており、私は彼の助手役だった。 彼は60歳近かったが、中国に従軍した経験があり、鼻梁に銃創があった。戦争賛美的な彼の中国話には辟易したが、江戸弁での戦前の東京話は面白かった。私が働き始めて1ヵ月ほど過ぎて、彼は自宅アパートで心臓発作を起こし、その後長く休んだ。 職場ではアルバイトの私に、彼の任が押し付けられた。詳細は省くが、検品作業の進行管理は意外に複雑で、いつの間にかそれを覚えた私を会社は頼った。冬休みは時給を倍近くにして働かされた。そんなとき、職長が復帰したが、3日目に職

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