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時流遡航

哲学の脇道遊行記―その実景探訪

第10回 ─不完全な言語の世界ゆえにこそ人間存在の意義も─

本田成親

2019年2月15日号

 科学理論の根底を支える数学という学問もまた、特殊な記号類(ある意味でそれらは記述用語の「漢字」にも相当する)を用いて展開される一種の言語の世界であり、それゆえに、絶対不変の存在ではないという話をしてきました。実際、そうだからこそ、その世界には常にさまざまな難題が待ち受けてもいるのです。「数学には必ず正解があるから」などとよく言われますが、それは大変な誤解で、一歩専門的数学の世界に踏み込んだ途端に、生涯をかけても容易には答えの見つからない問題、答えらしきものが得られてもそれが現実には何を意味しているのか皆目不明な事態、さらには、絶対的な正解そのものが存在しないらしいという状況などが立ち現れてくるのです。 例えば、一般には数直線は連続しているものだと考えられがちなのですが、実のところ話はそう容易ではありません。整数、分数、無理数などをすべ...  科学理論の根底を支える数学という学問もまた、特殊な記号類(ある意味でそれらは記述用語の「漢字」にも相当する)を用いて展開される一種の言語の世界であり、それゆえに、絶対不変の存在ではないという話をしてきました。実際、そうだからこそ、その世界には常にさまざまな難題が待ち受けてもいるのです。「数学には必ず正解があるから」などとよく言われますが、それは大変な誤解で、一歩専門的数学の世界に踏み込んだ途端に、生涯をかけても容易には答えの見つからない問題、答えらしきものが得られてもそれが現実には何を意味しているのか皆目不明な事態、さらには、絶対的な正解そのものが存在しないらしいという状況などが立ち現れてくるのです。 例えば、一般には数直線は連続しているものだと考えられがちなのですが、実のところ話はそう容易ではありません。整数、分数、無理数などをすべて動

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