医薬経済オンライン

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読む医療ー医師が書いた本の斜め読みー

内部と外部で落差が広がる震災経験

第119回

大西一幸

2019年4月15日号

 災害の記憶と記録は違うが、厳密に区分するのは難しい。そして、その難しさは、記録が映像や音声の質量の豊かさとともに進歩し、人々が錯覚や思い違いをしていることに気付きにくくさせているのが要因であるように思う。その場にいなかったはずなのに、記録を記憶として格納してしまう。共有したと思い込む比重は増えているのではないか。例えば、市街地や家屋、田畑を飲み込んでいく東日本大震災の津波の映像と人々が叫ぶ声を、メディアが折に触れて流す。我われはそれを「記憶」していると思ってはいないだろうか。  昨年だけでも、激烈な暴雨風の中で吹き飛ばされる車を映像で観た台風21号、凶暴な動物が爪で引っ掻いたような北海道胆振東部地震の地滑りの無数の跡形。記録の「痛み」は身体的にも精神的にも実際は薄弱だ。しかし、映像記録を振り返って、怖気や悔悟などを感じると記憶...  災害の記憶と記録は違うが、厳密に区分するのは難しい。そして、その難しさは、記録が映像や音声の質量の豊かさとともに進歩し、人々が錯覚や思い違いをしていることに気付きにくくさせているのが要因であるように思う。その場にいなかったはずなのに、記録を記憶として格納してしまう。共有したと思い込む比重は増えているのではないか。例えば、市街地や家屋、田畑を飲み込んでいく東日本大震災の津波の映像と人々が叫ぶ声を、メディアが折に触れて流す。我われはそれを「記憶」していると思ってはいないだろうか。  昨年だけでも、激烈な暴雨風の中で吹き飛ばされる車を映像で観た台風21号、凶暴な動物が爪で引っ掻いたような北海道胆振東部地震の地滑りの無数の跡形。記録の「痛み」は身体的にも精神的にも実際は薄弱だ。しかし、映像記録を振り返って、怖気や悔悟などを感じると記憶に

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