「腫れ物」裁判員に弱腰の裁判所
ナマの事実を「加工」させてまで
元特捜部主任検事 前田恒彦
2019年6月1日号
09年5月のスタートから10年を経た裁判員制度。補欠を含めて裁判員に選ばれる確率は約0.01%だが、すでに9万人超が経験した。膨大な供述調書ではなく、核心をつく法廷証言を重視するなど、確かに刑事裁判のかたちを変えた。
しかし、「素人の裁判員にわかりやすく」という姿勢を重視するあまり、争点や証拠を絞り込む公判前整理手続に時間が割かれ、社会の関心が冷めた頃に公判が始まり、それでも審理に時間がかかるなど、さまざまな問題点が指摘されているのも事実だ。
とくに深刻なのは、殺人や強盗殺人、傷害致死など人の死が絡む重大事件において、ナマの事実を「加工」した証拠による裁判が横行しているという点である。
すなわち、被害者や遺族の無念の思いを裁判の場で明らかにしたい検察からすると、遺体や現場の状況、凶器の形状などがありのままに...
09年5月のスタートから10年を経た裁判員制度。補欠を含めて裁判員に選ばれる確率は約0.01%だが、すでに9万人超が経験した。膨大な供述調書ではなく、核心をつく法廷証言を重視するなど、確かに刑事裁判のかたちを変えた。
しかし、「素人の裁判員にわかりやすく」という姿勢を重視するあまり、争点や証拠を絞り込む公判前整理手続に時間が割かれ、社会の関心が冷めた頃に公判が始まり、それでも審理に時間がかかるなど、さまざまな問題点が指摘されているのも事実だ。
とくに深刻なのは、殺人や強盗殺人、傷害致死など人の死が絡む重大事件において、ナマの事実を「加工」した証拠による裁判が横行しているという点である。
すなわち、被害者や遺族の無念の思いを裁判の場で明らかにしたい検察からすると、遺体や現場の状況、凶器の形状などがありのままに描
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