読む医療ー医師が書いた本の斜め読みー
「死の医療化」と精神的貧困
第122回
大西一幸
2019年6月1日号
父は認知症だったが、発症して5年ほどで亡くなった。86歳だったが、終末期は食べ物はむろん、水さえも口に入れようとはしなかった。臨終時には力を振り絞って呼吸し、両手で何かを掴むような仕草をみせた。暗くなったのだと思った。「もっと光を!」はゲーテが臨終のときに発したとされるが、父の死の瞬間に、生き物はこうして最期を迎えるのだと理解できた。ゲーテが特別だったわけではない。
父の最期に関しては、入所していた高齢者施設の管理者(介護福祉士)、附属診療所の医師2人、看護師と何度も話し合った。若い医師は、まだ体力はある、胃ろうで寿命を延ばすべきだと私を説得し、看護師も同調した。高齢の医師と介護福祉士は、「ご家族の判断を尊重したい」と言って、自分の見解は示さなかった。最後の話し合いの後の私の決断は、私と妹の2人で彼が食べるか、飲むかをサポート...
父は認知症だったが、発症して5年ほどで亡くなった。86歳だったが、終末期は食べ物はむろん、水さえも口に入れようとはしなかった。臨終時には力を振り絞って呼吸し、両手で何かを掴むような仕草をみせた。暗くなったのだと思った。「もっと光を!」はゲーテが臨終のときに発したとされるが、父の死の瞬間に、生き物はこうして最期を迎えるのだと理解できた。ゲーテが特別だったわけではない。
父の最期に関しては、入所していた高齢者施設の管理者(介護福祉士)、附属診療所の医師2人、看護師と何度も話し合った。若い医師は、まだ体力はある、胃ろうで寿命を延ばすべきだと私を説得し、看護師も同調した。高齢の医師と介護福祉士は、「ご家族の判断を尊重したい」と言って、自分の見解は示さなかった。最後の話し合いの後の私の決断は、私と妹の2人で彼が食べるか、飲むかをサポートして
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