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鳥集徹の口に苦い話 〜媚びないジャーナリストの劇薬処方箋〜

予防医療「医療費削減」の幻想 医療依存の問題も議論を

第89回

鳥集徹

2019年7月1日号

 「朝日新聞」(19年6月12日付)に載った医療経済学者・康永秀生氏のインタビュー「医療費削減の幻想」を興味深く読んだ。「予防医療は医療費がかかるタイミングを先送りしているだけで、医療費を削減する効果はない」というのが要旨だ。 例えば、禁煙対策で肺がんになる人が減れば、短期的な医療費は減るが、寿命も長くなるので一生にかかる医療費の総額はむしろ増える。また、厚生労働省はメタボ健診で約2兆円の医療費を削減する目標を掲げたが、小泉純一郎元首相の言葉を受けた官僚が仕方なく設定しただけで、科学的根拠はまったくないと康永氏は指摘する。 禁煙の話は、EBMの実践家として知られる名郷直樹医師が著書『「健康第一」は間違っている』などですでに指摘していた。メタボ健診も、『メタボの罠─病人にされる健康な人々』などの著書がある東海大学名誉教授の大櫛陽一氏をはじめ、多くの...  「朝日新聞」(19年6月12日付)に載った医療経済学者・康永秀生氏のインタビュー「医療費削減の幻想」を興味深く読んだ。「予防医療は医療費がかかるタイミングを先送りしているだけで、医療費を削減する効果はない」というのが要旨だ。 例えば、禁煙対策で肺がんになる人が減れば、短期的な医療費は減るが、寿命も長くなるので一生にかかる医療費の総額はむしろ増える。また、厚生労働省はメタボ健診で約2兆円の医療費を削減する目標を掲げたが、小泉純一郎元首相の言葉を受けた官僚が仕方なく設定しただけで、科学的根拠はまったくないと康永氏は指摘する。 禁煙の話は、EBMの実践家として知られる名郷直樹医師が著書『「健康第一」は間違っている』などですでに指摘していた。メタボ健診も、『メタボの罠─病人にされる健康な人々』などの著書がある東海大学名誉教授の大櫛陽一氏をはじめ、多くの識者

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