医政羅針盤
MMTは救世主か? 悪魔の囁きか?
山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座教授 村上正泰
2019年8月1日号
最近、MMT(現代貨幣理論)に注目が集まっている。MMT自体はにわかに誕生した理論ではないのだが、米国で史上最年少女性下院議員となった民主党の期待の新星、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスが支持を表明し、突如として議論に火が付いた。
世界的に経済の長期停滞が指摘されるなか、財政政策を重視する声が強まっている。MMTが注目されるのもその文脈からだが、財政出動を主張しているのはMMTだけではない。ローレンス・サマーズ、オリヴィエ・ブランシャール、ポール・クルーグマンなどの世界的に著名な経済学者も、積極的な財政政策の有効性を唱えている。だが、これらの主流派経済学者はMMTに批判的だ。
他方、確かにMMTは「財政赤字に問題はない」と主張しているため、その論理的帰結として、財政拡大を許容することにつながり得るのだが、MMT本来の主張はデフ...
最近、MMT(現代貨幣理論)に注目が集まっている。MMT自体はにわかに誕生した理論ではないのだが、米国で史上最年少女性下院議員となった民主党の期待の新星、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスが支持を表明し、突如として議論に火が付いた。
世界的に経済の長期停滞が指摘されるなか、財政政策を重視する声が強まっている。MMTが注目されるのもその文脈からだが、財政出動を主張しているのはMMTだけではない。ローレンス・サマーズ、オリヴィエ・ブランシャール、ポール・クルーグマンなどの世界的に著名な経済学者も、積極的な財政政策の有効性を唱えている。だが、これらの主流派経済学者はMMTに批判的だ。
他方、確かにMMTは「財政赤字に問題はない」と主張しているため、その論理的帰結として、財政拡大を許容することにつながり得るのだが、MMT本来の主張はデフレ
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