読む医療ー医者が書いた本の斜め読みー
自他の境界に生きる人
第143回
大西一幸
2020年4月15日号
精神医療のゆらぎとひらめき横田泉著日本評論社2019年7月刊 ときどき、夢にみる光景がある。小学校3年生から5年生まで同級生だった朝鮮人のKが北朝鮮に帰還する日の駅。駅前の広場には、見送りの人々が、どこにこんなに関係者がいたのかと思うほどひしめきあっており、背の低い私は大人たちをかき分けながら、渡された北朝鮮国旗を片手に、必死でKを探した。夢はいつも、探しているうちに絶望的な気持ちが自分を支配していくところで終わる。 Kの一家は廃品回収のような仕事をしていた。Kは体格がよく、成績も一番。いわゆる万能選手で、クラスの野球チームではエースで4番、わがクラスは常勝だった。はっきりと覚えているのは、K一家は通名を使っていなかった。誰もがその一家は朝鮮人と認識していたが、子ども同士では何の違和感もなく、Kはヒーローだった。 当時、北朝鮮は夢のように平等で美しく...
精神医療のゆらぎとひらめき横田泉著日本評論社2019年7月刊 ときどき、夢にみる光景がある。小学校3年生から5年生まで同級生だった朝鮮人のKが北朝鮮に帰還する日の駅。駅前の広場には、見送りの人々が、どこにこんなに関係者がいたのかと思うほどひしめきあっており、背の低い私は大人たちをかき分けながら、渡された北朝鮮国旗を片手に、必死でKを探した。夢はいつも、探しているうちに絶望的な気持ちが自分を支配していくところで終わる。 Kの一家は廃品回収のような仕事をしていた。Kは体格がよく、成績も一番。いわゆる万能選手で、クラスの野球チームではエースで4番、わがクラスは常勝だった。はっきりと覚えているのは、K一家は通名を使っていなかった。誰もがその一家は朝鮮人と認識していたが、子ども同士では何の違和感もなく、Kはヒーローだった。 当時、北朝鮮は夢のように平等で美しく平和
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