医政羅針盤
平等は破壊のあとにやってくる?
山形大学大学院医学系研究科 医療政策学講座教授 村上正泰
2020年5月15日号
今回の新型コロナ禍は、今後の医療政策にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。先行きがあまりに不透明であり、現時点では十分に議論できる段階にはないが、医療政策は、社会経済政策の大きな方向性によっても左右される。このような大規模なショックを受け、社会はどのような変化を遂げるのか、いくつかの議論を参照しつつ、考えることにしたい。
感染症の流行が不平等の是正につながったという議論がある。スタンフォード大学で古代史を専門とするウォルター・シャイデル教授の『暴力と不平等の人類史』という評判の本は、膨大なデータからそれを証明したものであり、本稿のタイトルは昨年出版された邦訳の帯に記されたメッセージ(に「?」を付したもの)だ。
シャイデル教授は、感染症の社会的影響を論じる際にお馴染みの中世後期のペストを取り上げ、ペスト...
今回の新型コロナ禍は、今後の医療政策にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。先行きがあまりに不透明であり、現時点では十分に議論できる段階にはないが、医療政策は、社会経済政策の大きな方向性によっても左右される。このような大規模なショックを受け、社会はどのような変化を遂げるのか、いくつかの議論を参照しつつ、考えることにしたい。
感染症の流行が不平等の是正につながったという議論がある。スタンフォード大学で古代史を専門とするウォルター・シャイデル教授の『暴力と不平等の人類史』という評判の本は、膨大なデータからそれを証明したものであり、本稿のタイトルは昨年出版された邦訳の帯に記されたメッセージ(に「?」を付したもの)だ。
シャイデル教授は、感染症の社会的影響を論じる際にお馴染みの中世後期のペストを取り上げ、ペストに伴
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