医薬経済オンライン

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医政羅針盤

数理モデルと現実世界―有用性と限界の狭間で

山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座教授 村上正泰

2020年7月1日号

危機はいつでも起こり得る  新型コロナウイルス禍の対応では、「8割おじさん」こと、西浦博・北海道大学教授のシミュレーションが注目を集めた。西浦教授による接触8割削減の提唱は、活動制限の根拠にもなったが、欧州並みの基本再生産数(R0)=2.5を仮定し、何も対策をしないと、人口の6割が感染すると集団免疫率を想定していたシミュレーションには、日本の実態に合っていないとの批判も多く出ている。  例えば、元日本免疫学会長であり、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授は、自然免疫の存在を無視しているなど、前提が間違っていると指摘している。そして、西浦教授自身も、すべての人が同じように振る舞うという仮定を置くなど、個人の同質性を前提とした計算方法の問題点を率直に認めている。  ここでは、接触8割削減という... 危機はいつでも起こり得る  新型コロナウイルス禍の対応では、「8割おじさん」こと、西浦博・北海道大学教授のシミュレーションが注目を集めた。西浦教授による接触8割削減の提唱は、活動制限の根拠にもなったが、欧州並みの基本再生産数(R0)=2.5を仮定し、何も対策をしないと、人口の6割が感染すると集団免疫率を想定していたシミュレーションには、日本の実態に合っていないとの批判も多く出ている。  例えば、元日本免疫学会長であり、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授は、自然免疫の存在を無視しているなど、前提が間違っていると指摘している。そして、西浦教授自身も、すべての人が同じように振る舞うという仮定を置くなど、個人の同質性を前提とした計算方法の問題点を率直に認めている。  ここでは、接触8割削減という主張

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