読む医療ー医師が書いた本の斜め読みー
ありのままで明るく生きよう
第154回
大西一幸
2020年10月1日号
『ボクはやっと認知症のことがわかった』、長谷川和夫・猪熊律子、KADOKAWA、2019年12月刊 00年の介護保険制度創設の直前だったと記憶するが、ぽつぽつと診療所の外来案内に「物忘れ」が標榜されるようになった頃のことだ。私は、「物忘れ外来」を先行的にスタートさせていた大阪市内の診療所を取材で訪れるために地下鉄に乗った。3人掛けシートの端にあるドア側に空席を見つけて座ると、隣には70歳ほどだと思える高齢夫婦が座っており、夫が何度も妻に同じ言葉を復唱させている。「桜、猫、電車、や」と夫。妻も素直に「桜、猫、電車」と繰り返す。 彼らは私と同じ場所に向かっていた。夫婦はこれから訪れる診療所で「長谷川式簡易知能評価スケール」の検査を受けると予想をつけているのだ。夫が事前に調べ、受診する妻に練習させているという図に見えた。練習して検査に臨むというのも理解に苦しむ。...
『ボクはやっと認知症のことがわかった』、長谷川和夫・猪熊律子、KADOKAWA、2019年12月刊 00年の介護保険制度創設の直前だったと記憶するが、ぽつぽつと診療所の外来案内に「物忘れ」が標榜されるようになった頃のことだ。私は、「物忘れ外来」を先行的にスタートさせていた大阪市内の診療所を取材で訪れるために地下鉄に乗った。3人掛けシートの端にあるドア側に空席を見つけて座ると、隣には70歳ほどだと思える高齢夫婦が座っており、夫が何度も妻に同じ言葉を復唱させている。「桜、猫、電車、や」と夫。妻も素直に「桜、猫、電車」と繰り返す。 彼らは私と同じ場所に向かっていた。夫婦はこれから訪れる診療所で「長谷川式簡易知能評価スケール」の検査を受けると予想をつけているのだ。夫が事前に調べ、受診する妻に練習させているという図に見えた。練習して検査に臨むというのも理解に苦しむ。実
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