読む医療ー医者が書いた本の斜め読みー
ちょっとシニカルな医療史
第165回
大西一幸
2021年3月15日号
0番目の患者逆説の医学史
リュック・ペリノ/広野和美・金丸啓子訳
2020年12月刊
1974年10月13日、東京都平河町の都道府県会館。怒りと苦しみに満ちた鮮明な光景とその時間の記憶が、いまでも夢に現れる。その日は日曜日だった。医薬業界紙の新米記者だった私は、サリドマイド副作用被害の和解調印式の取材に出かけた。上司は、和解内容はすでに報じてある、お前の役目はセレモニーの写真を撮ること、関係者のコメントをメモすることだけだ、取材は1時間程度で終わる、などと言い、その休日に予定を組んでいた私を口説いた。
妻は2ヵ月後に出産予定だった。日曜日は遠出をして買い物する約束をしていた。彼女は生まれてくる子のための買い物リストをつくり、新宿のデパートに出かけることをかなり前から宣言していた。少し迷ったが1時間程度で済むという上司の...
0番目の患者逆説の医学史
リュック・ペリノ/広野和美・金丸啓子訳
2020年12月刊
1974年10月13日、東京都平河町の都道府県会館。怒りと苦しみに満ちた鮮明な光景とその時間の記憶が、いまでも夢に現れる。その日は日曜日だった。医薬業界紙の新米記者だった私は、サリドマイド副作用被害の和解調印式の取材に出かけた。上司は、和解内容はすでに報じてある、お前の役目はセレモニーの写真を撮ること、関係者のコメントをメモすることだけだ、取材は1時間程度で終わる、などと言い、その休日に予定を組んでいた私を口説いた。
妻は2ヵ月後に出産予定だった。日曜日は遠出をして買い物する約束をしていた。彼女は生まれてくる子のための買い物リストをつくり、新宿のデパートに出かけることをかなり前から宣言していた。少し迷ったが1時間程度で済むという上司の観
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