時流遡航
日々諸事遊考⑯
第256回 自分の旅を創る ~想い出深い人生の軌跡を刻むには⑦
本田成親
2021年6月15日号
未熟で世間知らずの学生だった遠い昔のことですが、いまだに忘れ難い旅についての想い出があります。高校時代の角川書店版現代国語の教科書に載っていた「絶望について」という一文に目を通した私は、その文章の流麗な文体と深く心に響く叙述内容とにたちまち魅せられてしまったのでした。
肉親の総てを失って天涯孤独の状況へと陥り、何かと思い悩むことの多かった当時の心境を見事に掬い取り、それを癒してくれたばかりか、将来の道行きへの心構えをも提示してくれたその名文との出遇いに、運命的なものを感じもしたものです。しかも、亀井勝一郎というその文章の筆者名を確認した瞬間、「あれ、もしかしたら……」という思いが胸中に湧き上がってきたのでした。
その3ヵ月ほど前のこと、私は、鹿児島市内のとある神社の縁日の夜店で、たまたま真新しい角川版の文庫本1冊...
未熟で世間知らずの学生だった遠い昔のことですが、いまだに忘れ難い旅についての想い出があります。高校時代の角川書店版現代国語の教科書に載っていた「絶望について」という一文に目を通した私は、その文章の流麗な文体と深く心に響く叙述内容とにたちまち魅せられてしまったのでした。
肉親の総てを失って天涯孤独の状況へと陥り、何かと思い悩むことの多かった当時の心境を見事に掬い取り、それを癒してくれたばかりか、将来の道行きへの心構えをも提示してくれたその名文との出遇いに、運命的なものを感じもしたものです。しかも、亀井勝一郎というその文章の筆者名を確認した瞬間、「あれ、もしかしたら……」という思いが胸中に湧き上がってきたのでした。
その3ヵ月ほど前のこと、私は、鹿児島市内のとある神社の縁日の夜店で、たまたま真新しい角川版の文庫本1冊を買
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