読む医療ー医者が書いた本の斜め読みー
根底にある社会的論議の薄さ
第176回
大西一幸
2021年9月1日号
生殖医療の衝撃石原理著/講談社16年8月8日刊行
医療系の業界専門紙記者の経験は長いが、追いかけてきた世界は医療や医薬品に関する制度や、市場、権力闘争などが全体の9割以上を占める。医学教育や薬学教育などのテーマも、取材の道筋は医療市場への影響や、職能間のバランスの変化、新たな医療構造の形などを報告、あるいは観測するようなものが主体だった。
70年代から80年代、医療社会は劇的に変化し、医療供給体制は整備時代から一気に総量抑制に向かい、医療保険制度は医療費適正化の時代となった。その間、「医療」を追いかける記者はネタに困ることはなかったというのが実感だ。
一方、「医学」を知ることには手を抜いてきたという思いは大きい。そして、実は医学は医療と表裏をなすものであり、医学の進歩の源泉には、社会や人々への健康、疾病治癒といった...
生殖医療の衝撃石原理著/講談社16年8月8日刊行
医療系の業界専門紙記者の経験は長いが、追いかけてきた世界は医療や医薬品に関する制度や、市場、権力闘争などが全体の9割以上を占める。医学教育や薬学教育などのテーマも、取材の道筋は医療市場への影響や、職能間のバランスの変化、新たな医療構造の形などを報告、あるいは観測するようなものが主体だった。
70年代から80年代、医療社会は劇的に変化し、医療供給体制は整備時代から一気に総量抑制に向かい、医療保険制度は医療費適正化の時代となった。その間、「医療」を追いかける記者はネタに困ることはなかったというのが実感だ。
一方、「医学」を知ることには手を抜いてきたという思いは大きい。そして、実は医学は医療と表裏をなすものであり、医学の進歩の源泉には、社会や人々への健康、疾病治癒といった高
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