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評伝 カタリン・カリコ(Katalin kalikó) 激動の人生とその軌跡−mRNAワクチンが人類を救う−

「共産圏」ハンガリーで生きる

評伝 カタリン・カリコ 第1回

吉成 河法吏

2021年9月15日号

 午前6時。彼女はいつものように娘のスーザンにならって、自宅のトレーニングマシンで、ボートのオールを漕いでいた。その後、6キロのジョギングをこなす。顔からは汗がしたたり落ち、体は完全に心地良く疲れ切っていた。  彼女こそ、19年12月に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスパンデミックの激流から、人類を救うことになったハンガリー生まれの生化学者、カタリン・カリコ博士である。メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンという、世界にまだ存在しなかったジャンルで新型コロナウイルスワクチンを開発した立役者である。  ワクチン・医薬品開発は、通常は、数年から10数年かかる。だが、カリコ博士らの開発したmRNAワクチンに関しては、新型コロナウイルスの遺伝子配列発表から第Ⅰ相試験までわずか6ヵ月、20年12月に米国食品医薬品局(FDA)の緊急使...  午前6時。彼女はいつものように娘のスーザンにならって、自宅のトレーニングマシンで、ボートのオールを漕いでいた。その後、6キロのジョギングをこなす。顔からは汗がしたたり落ち、体は完全に心地良く疲れ切っていた。  彼女こそ、19年12月に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスパンデミックの激流から、人類を救うことになったハンガリー生まれの生化学者、カタリン・カリコ博士である。メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンという、世界にまだ存在しなかったジャンルで新型コロナウイルスワクチンを開発した立役者である。  ワクチン・医薬品開発は、通常は、数年から10数年かかる。だが、カリコ博士らの開発したmRNAワクチンに関しては、新型コロナウイルスの遺伝子配列発表から第Ⅰ相試験までわずか6ヵ月、20年12月に米国食品医薬品局(FDA)の緊急使用

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