「脇役たち」の矜恃 〜被災地からの言付け〜
祈念碑
第6回
薬剤師:武田雄高
2022年2月1日号
小学校1年生の2月、登校したばかりの私を見つけた担任が駆け寄って来て、すぐ家に帰るように言った。事情がわからぬまま自宅に帰ると、母が死んだと父から知らされた。その日の夕方、クラスの女子が2人で訪ねてきてチョコを置いていった。それから私は誰かが亡くなった日には遺族にチョコレートを贈るものなのだと思い込んでいた。母の命日がバレンタインデーだと知ったのは数年経ってからだ。
命日には市街を見下ろせる丘の墓前で、小学校の頃に祖母から仕込まれた般若心経を唱える。墓地の荘厳な空気に包まれる感覚が好きだ。私がとくに霊感的なものを持ち合わせているわけではあるまいが、そこに故人の魂があると言われても疑わないのは、幼少から姿なき母の存在を信じてきたせいだろう。恥ずかしながらこの歳になっても、いつも故父母に見張られている気がしてならない。
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小学校1年生の2月、登校したばかりの私を見つけた担任が駆け寄って来て、すぐ家に帰るように言った。事情がわからぬまま自宅に帰ると、母が死んだと父から知らされた。その日の夕方、クラスの女子が2人で訪ねてきてチョコを置いていった。それから私は誰かが亡くなった日には遺族にチョコレートを贈るものなのだと思い込んでいた。母の命日がバレンタインデーだと知ったのは数年経ってからだ。
命日には市街を見下ろせる丘の墓前で、小学校の頃に祖母から仕込まれた般若心経を唱える。墓地の荘厳な空気に包まれる感覚が好きだ。私がとくに霊感的なものを持ち合わせているわけではあるまいが、そこに故人の魂があると言われても疑わないのは、幼少から姿なき母の存在を信じてきたせいだろう。恥ずかしながらこの歳になっても、いつも故父母に見張られている気がしてならない。
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