「無策無敵」の政権運営が岸田首相の本質

政策は次々と変節、「聞く力」はバラマキの源泉

2022年6月15日号

　岸田文雄首相が唱える「新しい資本主義」のメッキが剥がれた。メーンには「再分配重視への転換」を掲げていたはずなのに、5月31日にまとめた実行計画原案は軸足が投資や成長路線に移り、首相の変節ぶりと理念のなさがあからさまになった。子育て支援、勤労者皆保険の実現といった柱の再分配政策にも財源のメドは立たず、早くも蜃気楼と化している。　首相の変節が露骨になったのは5月5日、外遊先の英国金融街・シティでの講演だった。「眠っている預貯金を叩き起こす」。首相は1092兆円に上る日本の家計の現預金を株などの資産に誘導する方針を鮮明にし、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける。Invest in Kishida（岸田に投資を）」と訴えた。この場で飛び出したキャッチフレーズが「資産所得倍増」だ。首相は昨年9月の自民党総裁選の公約に「令和版所得倍増計画」を掲げ、政権発足... 　岸田文雄首相が唱える「新しい資本主義」のメッキが剥がれた。メーンには「再分配重視への転換」を掲げていたはずなのに、5月31日にまとめた実行計画原案は軸足が投資や成長路線に移り、首相の変節ぶりと理念のなさがあからさまになった。子育て支援、勤労者皆保険の実現といった柱の再分配政策にも財源のメドは立たず、早くも蜃気楼と化している。　首相の変節が露骨になったのは5月5日、外遊先の英国金融街・シティでの講演だった。「眠っている預貯金を叩き起こす」。首相は1092兆円に上る日本の家計の現預金を株などの資産に誘導する方針を鮮明にし、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける。Invest in Kishida（岸田に投資を）」と訴えた。この場で飛び出したキャッチフレーズが「資産所得倍増」だ。首相は昨年9月の自民党総裁選の公約に「令和版所得倍増計画」を掲げ、政権発足時も

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