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時流遡航

日々諸事遊考㊹

第284回 ─老いた身が小ドライブ旅行に 托す想い②─

本田成親

2022年8月15日号

伊豆半島赤沢恒陽台にて  翌朝深い眠りから醒めたのは午前6時頃のことでしたが、折しも早朝特有のやわらかな光が、部屋の窓辺を覆うカーテンを明るく照らし出していました。10畳敷きの客間を独り占めしていた私は、その光にわれるようにして、おもむろに寝床から立ち上がると、カーテンを開きガラス戸を押しあけて板張りのベランダへと歩み出てみました。そして初夏の爽やかな大気に全身を委ねながら、大きく眼下に広がる太平洋の朝明けの光景を見下ろすことになったのです。  空全体は薄曇り気味で、静かなを赤々と照らす朝の陽光こそ見られなかったものの、穏やかそのもののその情景を目にしていると、不穏な世相の流れを前にして些か苛立ち揺れ惑う心が癒され、静かな境地へと導かれる想いがしたものでした。  折々涼やかな風の流れる標高400メートルほど... 伊豆半島赤沢恒陽台にて  翌朝深い眠りから醒めたのは午前6時頃のことでしたが、折しも早朝特有のやわらかな光が、部屋の窓辺を覆うカーテンを明るく照らし出していました。10畳敷きの客間を独り占めしていた私は、その光にわれるようにして、おもむろに寝床から立ち上がると、カーテンを開きガラス戸を押しあけて板張りのベランダへと歩み出てみました。そして初夏の爽やかな大気に全身を委ねながら、大きく眼下に広がる太平洋の朝明けの光景を見下ろすことになったのです。  空全体は薄曇り気味で、静かなを赤々と照らす朝の陽光こそ見られなかったものの、穏やかそのもののその情景を目にしていると、不穏な世相の流れを前にして些か苛立ち揺れ惑う心が癒され、静かな境地へと導かれる想いがしたものでした。  折々涼やかな風の流れる標高400メートルほどの

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