家計簿目線の医療経済 コスパ患者学
メトホルミン
第3回
黒澤 恵
2022年8月15日号
治療の効率を「NNT」(治療効果が1人で得られるのに必要な治療者数)と「コスト」で評価する「コスパ患者学」——。今回も血糖低下薬を検証したい。取り上げるのは、最近まで欧米で2型糖尿病に対する絶対的な第一選択薬だった「メトホルミン」である。
メトホルミンがそのような位置づけだった理由は、2型糖尿病患者の臨床転帰改善エビデンスを持つ唯一の血糖低下薬とされていたためだ。そのエビデンスとは “UKPDS34”。20年以上前の98年に報告された、英国の臨床試験である。(①)肥満を伴う2型糖尿病患者に、生活指導だけでなくメトホルミンを追加した結果、生活指導のみに比べ、1年あたりの死亡(主要評価項目*)リスクは相対的に36%、有意に減少していた。
と書くと、まるで10人のうち3人が死亡を回避できたように感じられるかもしれないが、そうではない。1年間あたり...
治療の効率を「NNT」(治療効果が1人で得られるのに必要な治療者数)と「コスト」で評価する「コスパ患者学」——。今回も血糖低下薬を検証したい。取り上げるのは、最近まで欧米で2型糖尿病に対する絶対的な第一選択薬だった「メトホルミン」である。
メトホルミンがそのような位置づけだった理由は、2型糖尿病患者の臨床転帰改善エビデンスを持つ唯一の血糖低下薬とされていたためだ。そのエビデンスとは “UKPDS34”。20年以上前の98年に報告された、英国の臨床試験である。(①)肥満を伴う2型糖尿病患者に、生活指導だけでなくメトホルミンを追加した結果、生活指導のみに比べ、1年あたりの死亡(主要評価項目*)リスクは相対的に36%、有意に減少していた。
と書くと、まるで10人のうち3人が死亡を回避できたように感じられるかもしれないが、そうではない。1年間あたりの
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