不当な扱いを受けてきた近藤誠さんの死を悼む

鳥集徹の口に苦い話〜媚びないジャーナリストの劇薬処方箋〜

第165回

鳥集徹

2022年9月1日号

　8月13日、訃報が飛び込んできた。『患者よ、がんと闘うな』（文藝春秋）や『医者に殺されない47の心得』（アスコム）などがベストセラーとなった医師で元慶應義塾大学医学部放射線科講師の近藤誠さんが亡くなったのだ。享年73。日本のがん医療を徹底批判してきた近藤さん自身ががんになったら、どんな治療を受けるのだろうと失礼ながら密かに期待していたが、まさか虚血性心不全で急逝するとは思わなかった。　近藤さんの一連の著作が注目され始めた90年代後半。筆者は駆け出しの医療ライターだった。その当時、がんの専門医たちを取材すると、「こんなに大きな手術ができる」とか、「許されるギリギリまで抗がん剤を使う必要がある」と自慢げに語る人が多かった。患者のQOL（生活の質）などお構いなしで、とにかくがん細胞を根こそぎ殲滅すればいい結果が出ると思い込んでいる人が多かっ... 　8月13日、訃報が飛び込んできた。『患者よ、がんと闘うな』（文藝春秋）や『医者に殺されない47の心得』（アスコム）などがベストセラーとなった医師で元慶應義塾大学医学部放射線科講師の近藤誠さんが亡くなったのだ。享年73。日本のがん医療を徹底批判してきた近藤さん自身ががんになったら、どんな治療を受けるのだろうと失礼ながら密かに期待していたが、まさか虚血性心不全で急逝するとは思わなかった。　近藤さんの一連の著作が注目され始めた90年代後半。筆者は駆け出しの医療ライターだった。その当時、がんの専門医たちを取材すると、「こんなに大きな手術ができる」とか、「許されるギリギリまで抗がん剤を使う必要がある」と自慢げに語る人が多かった。患者のQOL（生活の質）などお構いなしで、とにかくがん細胞を根こそぎ殲滅すればいい結果が出ると思い込んでいる人が多かった

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