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臨床研究と患者の人権

第3シリーズ⑩ 倫理指針逸脱した先進医療

ジャーナリスト 出河雅彦

2022年10月1日号

金沢大学病院  金沢大学は2014年4月22日の記者会見で、カフェイン併用化学療法を受けた患者のなかに「インシデントレポート以外に必要とされる報告が行われていなかった」死亡事例があることを明らかにしていた。  この患者は2010年3月に抗がん剤アドリアマイシンの副作用の心筋症で死亡した16歳の少女である。少女は、金沢大学病院が本来、倫理審査委員会の承認を受けた臨床試験として実施しなければならない同療法を、臨床試験の被験者登録をしないまま実施した106人のうちの1人だった。  金沢大学附属病院カフェイン併用化学療法に関する調査委員会(以下、カフェイン併用化学療法調査委員会と言う)の報告書によれば、この死亡事例は、病棟の医療安全管理を担当するリスクマネージャーである病棟医長から、患者の死亡の翌日に、その事実を報告するインシ... 金沢大学病院  金沢大学は2014年4月22日の記者会見で、カフェイン併用化学療法を受けた患者のなかに「インシデントレポート以外に必要とされる報告が行われていなかった」死亡事例があることを明らかにしていた。  この患者は2010年3月に抗がん剤アドリアマイシンの副作用の心筋症で死亡した16歳の少女である。少女は、金沢大学病院が本来、倫理審査委員会の承認を受けた臨床試験として実施しなければならない同療法を、臨床試験の被験者登録をしないまま実施した106人のうちの1人だった。  金沢大学附属病院カフェイン併用化学療法に関する調査委員会(以下、カフェイン併用化学療法調査委員会と言う)の報告書によれば、この死亡事例は、病棟の医療安全管理を担当するリスクマネージャーである病棟医長から、患者の死亡の翌日に、その事実を報告するインシデ

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