検証 医薬品と[特許]
オプジーボ特許紛争の結末②
第19回
元大阪大学大学院 経済学研究科講師 西口博之
2023年8月15日号
小野薬品らが米メルクに対し抗PD―1抗体「オプジーボ」の特許侵害を訴えた訴訟がなぜ和解に至ったのかを考察したい。
まず前提として、京都大学の本庶佑博士が小野薬品を相手取り提訴した訴訟では、対メルク訴訟の協力費用の支払金額を求めた争いだった。21年9月2日の大阪地裁での口頭弁論の場で、本庶博士は具体的な対メルク訴訟の協力に関する質問に対して「協力というのは不正確で、私は原告、張本人として参加し、共同研究者らの力も得て証拠のほぼ全部を集めた。単なる提訴協力や助言と言うには逸脱した仕事をした」(①)と述べ、一部メデイアは「メルクとの裁判ではアメリカで証言台にも立ちました。その結果17年1月には小野薬品・BMS(ブリストル・マイヤーズスクイブ)は勝訴的和解に到った」(②)とまで報道している。
つまり、本庶博士は自身の働きを単なる「協...
小野薬品らが米メルクに対し抗PD―1抗体「オプジーボ」の特許侵害を訴えた訴訟がなぜ和解に至ったのかを考察したい。
まず前提として、京都大学の本庶佑博士が小野薬品を相手取り提訴した訴訟では、対メルク訴訟の協力費用の支払金額を求めた争いだった。21年9月2日の大阪地裁での口頭弁論の場で、本庶博士は具体的な対メルク訴訟の協力に関する質問に対して「協力というのは不正確で、私は原告、張本人として参加し、共同研究者らの力も得て証拠のほぼ全部を集めた。単なる提訴協力や助言と言うには逸脱した仕事をした」(①)と述べ、一部メデイアは「メルクとの裁判ではアメリカで証言台にも立ちました。その結果17年1月には小野薬品・BMS(ブリストル・マイヤーズスクイブ)は勝訴的和解に到った」(②)とまで報道している。
つまり、本庶博士は自身の働きを単なる「協力」
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