家計簿目線の医療経済 コスパ患者学
エソメプラゾール
第26回 推奨されるべきエビデンスもないのに大ヒット
黒澤 恵
2023年8月15日号
薬剤による治療効果とコストを勘案し費用対効果を考える本連載、今回はプロトンポンプ阻害薬の「エソメプラゾール」を取り上げる。現在はジェネリックも発売されているが、それ以前は年間900億円を売上げていたヒット商品である。ではどれほど優れた薬剤なのか。
まず胃食道逆流症(GERD)から見てみよう。日本消化器病学会が作成した「診療ガイドライン2021」では、「軽症」逆流性食道炎の初期治療としてはプロトンポンプ阻害薬とボノプラザンのいずれもが第一選択薬として用い得るとされている。そして「GERDの治療」で「最も重要」と位置付けているのが「食道粘膜傷害の治癒及び寛解の維持」である。そこでエソメプラゾールの治癒作用に関するエビデンスを探すと、国内569例を対象とした無作為化ダブルブラインド試験が報告されている(①)。それによれば軽症GERDへの8週間投与で、少...
薬剤による治療効果とコストを勘案し費用対効果を考える本連載、今回はプロトンポンプ阻害薬の「エソメプラゾール」を取り上げる。現在はジェネリックも発売されているが、それ以前は年間900億円を売上げていたヒット商品である。ではどれほど優れた薬剤なのか。
まず胃食道逆流症(GERD)から見てみよう。日本消化器病学会が作成した「診療ガイドライン2021」では、「軽症」逆流性食道炎の初期治療としてはプロトンポンプ阻害薬とボノプラザンのいずれもが第一選択薬として用い得るとされている。そして「GERDの治療」で「最も重要」と位置付けているのが「食道粘膜傷害の治癒及び寛解の維持」である。そこでエソメプラゾールの治癒作用に関するエビデンスを探すと、国内569例を対象とした無作為化ダブルブラインド試験が報告されている(①)。それによれば軽症GERDへの8週間投与で、少な
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