日々諸事遊考71 | 医薬経済オンライン

時流遡航

日々諸事遊考71

第311回　─しばし随想の赴くままに人間というものの宿命的本質について考える①─

本田成親

2023年10月1日号

　世の片隅で日々ささやかに生きる人間など、一介の塵どころか、顕微鏡で見る1個の細菌にすら値しないとでも言いたげに、世界には諸々の嵐が吹き荒れている。台風などに象徴される自然界の猛威もさることながら、昨今は国家間の紛争、政治世界の紛糾、宗教界の対立、思想上の闘争、行政界の擾乱、民間企業間の熾烈な競合といった人為的嵐のほうも凄まじい。数々のそんな嵐に翻弄され、当所もなく中空を舞い漂うこの愚身ごときには今さらできることなど何ひとつありはしない。だが、たとえ存在自体が無そのものの命の屑ではあったとしても、生き永らえている限り、自己意識だけはなお密かに息づき続ける。そして、一生命体としての最後の証とでもいうべきそんな儚い意識の屑が、無力を承知で微かに蠢き、そっと囁きかけてくる――この世から消え去る前に、自らを人間と称しつつ生きてきたその愚かさくらいは... 　世の片隅で日々ささやかに生きる人間など、一介の塵どころか、顕微鏡で見る1個の細菌にすら値しないとでも言いたげに、世界には諸々の嵐が吹き荒れている。台風などに象徴される自然界の猛威もさることながら、昨今は国家間の紛争、政治世界の紛糾、宗教界の対立、思想上の闘争、行政界の擾乱、民間企業間の熾烈な競合といった人為的嵐のほうも凄まじい。数々のそんな嵐に翻弄され、当所もなく中空を舞い漂うこの愚身ごときには今さらできることなど何ひとつありはしない。だが、たとえ存在自体が無そのものの命の屑ではあったとしても、生き永らえている限り、自己意識だけはなお密かに息づき続ける。そして、一生命体としての最後の証とでもいうべきそんな儚い意識の屑が、無力を承知で微かに蠢き、そっと囁きかけてくる――この世から消え去る前に、自らを人間と称しつつ生きてきたその愚かさくらいは、

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